夫婦喧嘩の翌朝、子に伝えたいこと
2024年06月11日 20:41
夫婦喧嘩の翌朝。
子どもの成長にとって、大事な局面だと思います。
「子どもの前で親は喧嘩をしてはいけない。見せてはいけない」と考えていらっしゃる方が多いように感じます。
しかし、喧嘩をしないことは不可能ではないでしょうか。
喧嘩を控えて、お互いに口を効かない冷戦状態にあることも子どもの精神状態には大きく影響を及ぼします。
もちろん、暴力や暴言など、お互いの人権を脅かすような手段を用いることは許されないことですし、子どもの精神状態によっては、喧嘩を控えた方がよい場面もあります。
ただ、普通の日常が過ごせているならば、夫婦喧嘩はむしろ子どもに成長促進的に作用することが多いというのも事実です。
成長促進的に作用させるよう利用することが出来る。とも言えます。ピンチはチャンスです。
そこで、どのようなことに気をつけると夫婦喧嘩を活用できそうか書いてみました。
子どもに見せる夫婦喧嘩のお作法
そもそも、人と人が共に生活する場面では、時に喧嘩が起きるのは自然なことだと思います。きょうだいしかり、友だちしかり。
真剣に夫婦がぶつかり合えば、喧嘩が起きないわけがありません。できればしたくはないものですが。でも向き合うからこそ喧嘩も発生します。
親のどちらか一方が我慢し続けたり、言いたいことを言えない空気感の中で暮らすことは、子どもには精神的な苦しさ、窒息しそうな感じを与えてしまうでしょうし、我慢する方の親を過剰に気遣わせてしまったり、「私さえいい子にすれば(親は仲良くしてくれるに違いない)」というファンタジーを子どもは持つことにもなるでしょう。
夫婦がお互いに言いたいことを言い合って、喧嘩している姿を見せることは、そういったことを防ぐ効果があります。人が生きるのはキレイごとでは済まないという現実を知る良い機会にもなるでしょう。
これは親のことではないですが、私が小さかった頃、浜田幸一さんという国会議員がテレビによく出ていました。歯に衣着せぬ発言と、愛嬌のある人柄、そして国会では武闘派で、小学生の私は「ハマコー」が暴れている映像をテレビで見ていました。(ビートたけしのテレビタックルという番組だった気がします)
なんとなく「子どもたちのために」戦ってくれているようにも感じていました(政治的に支持しているということではなく、子ども心の印象です)。だから何となく安心もできました。「大人は、こうやって戦いながら、社会を作っているんだなあ」という印象も刷り込まれていったように思います。
「子どものために、この国の未来のために」という大義名分を掲げながら、感情をむき出しで戦っている姿を見ることは、決してマイナスばかりではなく、プラスもあるように思います。しかし最近はそのような場面がマスコミであまり報じられなくなった印象を強く持っています。
一方で、ひどい暴力にまつわるニュースは後を絶ちません。上手な喧嘩が出来る大人が減ってきているのかなと感じたりすることもあります。いまの日本社会では、傷つくことを過剰に恐れる雰囲気が強いように思います。
話が脇道に逸れましたが、大人、親がけんかをしながら「生活を良くしていこう」、「子どものために頑張ろう」という姿を見ることは、子ども心に感じ取ることが非常にたくさんあると思いますし、それらは心の栄養として、また時には不要物として、でも免疫力を高めるものとして、子どもの心に作用していくものと思います。
ただしその際には、お作法があるように思います。
子どもに見せる夫婦喧嘩のお作法です。これを守れば、子どもの心を守り育てる環境は何とか作れるのではないかという作法です。逆に守らないと子どもの心にはマイナスが多くなるように思います。
暴力や暴言などの身体的、精神的DVは当然禁止です。これはいうまでもありません。
そのうえで、冒頭で書いた、喧嘩の翌朝の子どもへの関わり方が極めて重要だと思います。
喧嘩中はなかなか冷静ではいられないでしょう。だからこそ、終わったあとのフォローに力を注ぐことを意識する必要があります。
1.昨夜の夫婦喧嘩の原因は「あなたではない」ことをはっきり言葉で伝えること。
「あなたのせいで喧嘩になったわけではない」ことを明確に言葉にして伝えることが大切です。
子どものこと、進路やしつけのことがきっかけになっている喧嘩であっても、「子どもが原因ではない」とはっきり伝えます。
テーマをめぐる両親の意見の相違が原因ですから。これで子どもは少し安心できます。
2.夫婦喧嘩の結末、途中経過の状況を子どもに伝えること。
「喧嘩は終わり仲直りしたこと」を子どもに伝える。これが理想です。
しかし現実には、一晩では解決しないことも多いでしょう。
喧嘩が平行線であれば、「今は休戦中だけど、今後もきちんと夫婦で話し合っていくこと」を子どもに伝える。ただし、細かい内容は伝えなくてよいです。夫や妻の愚痴や悪口も伝えなくてよいです。いまどうなっているのか。だけはちゃんと伝えておくと子どもは安心できます。
あまり望ましくないのは、夫婦喧嘩のことには一切触れずに、何もなかったかのように朝から普通の日常を送ることです。
子どもは、「え?どうなったんだろう」と混乱してしまいます。言葉にされない沈黙は、子どもの心にファンタジーを引き起こします。「私が良い子にすれば仲直りしてくれるのかな」などのように。
また子どもを夫婦のどちらかの味方につけるような、喧嘩に巻き込むことも避けるべきことでしょう。
他にもケースバイケースで留意点はあります。しかし、この2点だけでも抑えておくと、大きな問題への発展を防ぐ効果は大いに期待できるのではないかと思います。
朝になったら自分の気持ちに折り合いをつけて、冷静に子に伝えると良いでしょう。
どちらも、気持ちをしっかり言語化することがポイントです。
それがどうしても難しい方はぜひ専門家へのご相談をご検討ください。
またこれを読まれて「自分はこんな家に育っていないぞ」と思われた方、「こんな発想があるのか」と単純に新鮮に思われた方も多いかもしれません。
あるいは嫌な過去を思い出され、気分が悪くなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
それはもしかしたら「トラウマ的な体験」と言えるものかもしれません。「トラウマ」は、事件や事故だけでなく、家庭の中でも発生するものなのです。
親との関係や対人関係の生きづらさを抱えていたり、子育てにお悩みの方は、臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングがお役に立てる可能性があります。
よろしければ、身近でアクセスしやすいカウンセリングルームのご利用をご検討してみていただければと思います。
お子さんのためにアクションすることは、自分のためでもあります。
「子育て、悪くはないな」と楽しんでいけますよう。