どんな感情でも持ち込んでいくとセラピーの意味が出てくる
2024年08月29日 18:09
カウンセリングは感情を持ち込んでいただく場です。
肌トラブルなら皮膚科、歯が痛ければ歯医者、肩こりなら整体…というように、感情トラブルならカウンセリングです。
感情はどのようなタイプのものでも等しく、歓迎されます。
うつ、怒り、虚しさ、妬み、悲しみ…。
日常の生活では、持ち込みを歓迎されないような感情たちも、等しくウェルカムです。
カウンセリングでは、感情は「誰かとの関係、誰かとのこころの交流で発生する」ことに注目します。
例えば、夫への怒りでお悩みの場合。
精神科や心療内科では、感情に作用する脳内物質としての投薬を行ってくれます。いわば、患者さん個人の体内に直接アプローチして感情の調整を試みます。
また、怒りを医師に傾聴してもらい、怒りの正当性について認めてもらえるかもしれません。怒りが生じにくい予防や怒りを感じたときの対処なとを助言されるかもしれません。
一方カウンセリングでは、カウンセラーとクライエントさんの2者間に生じる生の感情へアプローチします。
カウンセリングという特殊な構造を設定し話を続けていくと、あたかもカウンセラーがクライエントさんにとっての夫のような疑似関係(心の中での。です。実際にそうなったら浮気や不倫ですから)が発生してきます。あるいは、夫以外の重要な他者かもしれません。クライエントさんの父や母ということもあるでしょう。
その疑似関係で生じる「怒り」そのものを、その場でカウンセラーは取り出し、取り扱おうとしていきます。
言い方を変えれば、カウンセラーのことがムカつく夫と同じように見え感じてくるということです。
そこで実際の夫に伝えるように、怒りを伝えてみます。そうすると、きっと夫とは違った反応が返ってきます。
「あなたのその怒り」、「あなたと私の間にあるこの怒り」「私のこの怒り」は、いったい何なんでしょうか。
こんなことをカウンセラーは言います。
このカウンセラーの問いから、やり取りが続いていきます。
精神科や心療内科のお医者さんに、夫と同じものを感じたとしても安心して「怒りをぶつける」ことは、なかなかできにくいですよね。
なぜなら医師の診察場面では、そういうことが可能になる設定、構造で出会っているわけではないからなのです。
カウンセリングでは、「今まさにここにある生の怒り」をカウンセラーと共に検討し、怒りをしっかり感じることや、怒りの意味を深く理解することを目指していきます。
怒りを出しても安全。という感覚も得られていくと思います。
このプロセスを通して、違った心境で夫と向き合うことに開かれていき、夫との関係性の捉え方が変わる、夫との関係性へのとらわれが変わる、結果として実際の夫との関係性も変わる。ことを目指します。
ですので、カウンセリングを続けると必ずカウンセラーやカウンセリングへの不安、不満、怒り、疑問など、あまり好ましくなさそうな、不快な、感情も出てきます。
そうしたら、それをカウンセリングで伝えてください。それをカウンセラーと話し合います。カウンセラーは、その感情をしっかり受け止め、話し合うために訓練を重ねています。
これこそがカウンセリング独自の取り組みです。
カウンセラーへ怒りを直接伝えること、カウンセラーがそれに正面から応えること。
この体験が感情を修正する契機になるということです。